岸田首相 日本時間11日 日米首脳会談へ 防衛 経済安保など連携

アメリカを訪れている岸田総理大臣は、日本時間の11日、バイデン大統領との首脳会談に臨みます。自衛隊とアメリカ軍の部隊連携の円滑化など、防衛面での協力を深めるとともに、経済安全保障、宇宙など幅広い分野での連携強化を確認する見通しです。

総理大臣として9年ぶりに国賓待遇でアメリカを訪れている岸田総理大臣は、日本時間の9日夜、アメリカの戦没者が埋葬されているアーリントン国立墓地で献花を行うほか、10日にかけて、マイクロソフトのブラッド・スミス社長ら経済関係者などとの意見交換を行います。

そして11日未明には、バイデン大統領との日米首脳会談に臨み、国際情勢が厳しさを増す中、日米両国が「グローバル・パートナー」として、幅広い分野で連携を強化していく方針を確認する見通しです。

防衛面では、自衛隊とアメリカ軍の部隊連携をより円滑にするため、それぞれの部隊の指揮・統制を向上させるとともに、防衛装備品の共同開発・生産などをめぐる協議の場を設けることや、在日アメリカ軍の大型艦船を日本で補修できる仕組みを整えることなどで合意する見通しです。

また、中国による経済的威圧を念頭に、AIや量子をはじめとした最先端技術の開発や、半導体などのサプライチェーンの強じん化といった経済安全保障分野での協力でも一致するものと見られます。

さらに、アメリカが主導する月探査プロジェクト「アルテミス計画」を含め、宇宙分野での連携拡大も確認する見通しです。

両首脳は、ウクライナや中東情勢、それに中国、北朝鮮などの動向をめぐっても意見を交わすものとみられます。

会談の一連の成果は共同声明にまとめ、発表することにしています。

岸田総理大臣は、12日未明には議会上下両院の合同会議で演説し、自由や民主主義に基づく国際秩序を守るため、日本も大きな責任を担っていく姿勢を示すことにしています。

また、現地では、同じ時期に招かれているフィリピンのマルコス大統領との3か国による初めての首脳会談も行われ、中国を念頭に、海洋安全保障分野の協力などをめぐって意見が交わされる予定です。

このほか岸田総理大臣は、ノースカロライナ州も訪れ、日本企業の視察や意見交換にも臨むことにしていて、一連の日程を通じ、日米両国の強固な結束を内外に発信したい考えです。

経済分野の焦点は

今回の日米首脳会談では、経済安全保障上、重要物資とされる半導体や急速に普及が進む生成AIなどの分野でも連携強化に向けた議論が交わされる見通しです。

日米両国は、中国を念頭に経済安全保障上、重要物資とされる半導体や、電気自動車のバッテリーの材料となるリチウムなど重要鉱物のサプライチェーン=供給網の強じん化に向け、外務、経済閣僚による経済版「2プラス2」の会合などで連携を確認してきました。

こうした経緯も踏まえて、日本政府は、今回の首脳会談で、次世代の半導体分野での共同研究開発や人材の育成、利用が急拡大している生成AIの開発の加速化や、いわゆる偽情報への対応などで両国の連携を確認するとともに、中国を念頭に輸出入の規制などで相手国に圧力をかける「経済的威圧」への対抗策についても議論を進展させたいとしています。

さらに脱炭素社会の実現に向けた協力も深めたいとしていて、次世代型の原子炉の研究開発や再生可能エネルギーの導入拡大に向けた技術革新などをテーマに議論が交わされる見通しです。

一方、日米関係に大きな影響を与える可能性があるのが、ことし11月のアメリカ大統領選挙で、再選を目指すバイデン大統領は国内の製造業への支援や雇用の創出を後押しする姿勢を打ち出しています。

また、バイデン政権は電気自動車やクリーンエネルギーなどの税制優遇措置を導入してアメリカ国内への投資を促していますが、こうした動きに対して、日本の官民がどう応えていくかも焦点です。

さらに日本製鉄が決めたアメリカの大手鉄鋼メーカー「USスチール」の買収をめぐっては、アメリカの鉄鋼業界の労働組合が反対し、組合が支持基盤のバイデン大統領も否定的な考えを示しているほか、大統領への返り咲きを目指す共和党のトランプ前大統領も買収を認めない考えを明らかにしています。

日本政府は、買収計画について「個別の経営に関することだ」などとして、日本製鉄の対応を見守る構えですが、今回の会談でどのようなやり取りが交わされるか注目されます。